戦後の荒廃から復興・発展を続け、1993年には一人当たりのGDPが世界一という、絶頂期を迎えたわが国の経済も社会も瞬時に終わり、その後、経済も国民のマインドも長期低落傾向の姿を浮き彫りにし始めました。いま、今後の帰趨を決する、まさに瀬戸際の状況に差し掛かっているといってよいでしょう。今後のあらゆる場面での回復や復権を期待する時、その根源に「人の力」があることは言うまでもありません。
産業分野、とりわけ中堅・中小企業の現状も、国内外の多様な不利な要因が重畳して、困窮・低落の傾向を辿っています。この困難に毅然として立ち向かえる先駆者は、企業の経営者です。とりわけ、時代を担う、若手後継人材に期待するところは想像を超えるものがありましょう。
上記の問題意識を背景に、近未来のわが国産業界を鼓舞、牽引する若手後継経営者の育成に、ささやかでも寄与する場を提案してみたい、これが会の企画者の思いです。言い換えれば、多忙な日々を送る経営者やその候補者が、関連する諸分野の本質の理解と最新の智慧と知識を、全身で吸収する場を提供し、ご一緒に切磋琢磨し、相互に触発し、同時に真のヒューマンネットワークを形成していただければとの願望を持っています。
それには、優れた経営に対する、あくなき挑戦心をもった人々が参画され、その欲求への乾きに、最先端のリーダーがマッチした水滴を垂せるような仕組みが必要ではないでしょうか。
ここで、主対象とするのは、「21世紀の新モノづくり分野」です。従来のものづくりは、ここ数年、新しい概念へと変化しつつあり、これを「新モノづくり」と呼ぶことにしましょう。新モノづくりとは、単に、物を製造することに限定せず、個人・社会に受容され、自然環境や国際環境に適合した価値財(モノ、コト、サービスとそれらの融合を含む)の創出と、価値財のライフサイクルに亘る活用とサービス、さらに、使用後の、静脈流に相当する自然への循環までを、トータルとして適正化する、「総合的な価値づくり」です。すなわち、ハードな物に限定せず、ソフトウエア、サービス、ソリューションに関わる情報、知識、智慧などの価値財並びにそれらを生み出すプロセスのすべてを含みます。
会の運用は会員の方々の要望を反映させながら、随時修正し続けていく予定です。
会の趣旨や企画をご覧いただき、ご意見を提示していただきますとともに、積極的にご参画いただきますように、ご案内申し上げます。
2011年10月
岩田一明(大阪大学・神戸大学 名誉教授、国際高等研究所 フェロー)